バンドシーン徹底解剖!
Vol.1 〜選ばれたのは4つ打ちだった!?〜

 

はじめに

 音楽は4つ打ちばかりと言われるようになった昨今、確かにテレビやお店のBGM等で流れる最新曲は4つ打ちが多いし、フェスにおいてもよくよく聞くと4つ打ちだよなと気付かされる。

 けれどこの4つ打ちというものを、しっかりと考えた事はあっただろうか。何故流行るのか、何故体がのれるのか。考えないでも楽しい音楽を、あえて深く探ってみると、決してブームだから4つ打ちをしているわけではないのだということを発見できる。

 4つ打ちというものを紐解くことで新たなドキドキを得る事が出来たなら、きっともっと楽しくなるのではないだろうか。

 To do Rock1回目の企画は、そんなコンセプトのもと『4つ打ち』を取り上げる。皆の心に轟くように。

 

 

〜4つ打ち音楽の定義〜

 

  • 4つ打ち音楽とは、4つ打ちビートを鳴らす音楽である。4つ打ちビートとは、1小節に4分音符が4回続くリズムのことを指す。ビートの位置が決まっているため、主にテクノやハウスなどダンスミュージックで使われる。(歴史年表を参照)

 

  • ダンスミュージックでの4つ打ちビートは、「打ち込み」で鳴らされる。打ち込みとは、MIDIという演奏情報を、DAWをはじめとしたシーケンサーソフトに事前に入力をしておき、それを再生することで演奏を行う手法である。そのため本来、4つ打ちビートはバンド形式ではないアーティストに多く用いられてきた。しかし最近はJ-POPやJ-ROCKでも広く用いられるようになってきた。

 

  • バンド形式の場合、主にバスドラムのキック音が等間隔に打ち鳴らして4つ打ちビートを用いる。最も基本的なリズムであり、短絡的だと捉えられることもあるが、打ち込みとは違い、人がキックを4つ正確に気持ち良く打つことは容易ではない。またキックとキックの間、隙間にそれ以外の音をどのように重ねるかが重要であり、奥深いリズムである。現在ロックシーンを席巻している4つ打ち音楽はこのタイプが多い。

 

〜4つ打ち音楽が流行る理由〜

 

  • 「心拍数」

 4つ打ちのドンドンという一定のリズムが人間の心拍数と似ているため、リズムとして馴染みやすい。さらに速いBPM(音楽のテンポを示す単位)は、人間が走ったときの心拍数に似ているため、高揚感を生み出し、「自然と体が音に乗ってしまう」現象が起き、その心地よさに中毒性も含んでいることが流行する理由である。4つ打ちビートの中でも特に心地よいとされるBPMは120前後とされている。

 

  • 「ドーパミンの作用」

 人は楽しいと感じるとき、脳が神経を興奮させ、快楽と陶酔感を与える神経伝達物質「ドーパミン」を出すとされている。人間が好きな音楽を聴くときもドーパミンが分泌されることが近年研究により確認された。音楽を聴いて、それに対して楽しいと感じドーパミンが分泌された脳は、また同じ感覚を求めて中毒性が生まれるのだ。流行によって、無意識的に4つ打ち音楽を聴いたユーザーでも、4つ打ち音楽にハマってしまう要因の一つがドーパミンと言える。

 

  • 「日本の4拍子文化」

 4つ打ち音楽は世界中で演奏されているが、日本でここまで流行している要因は、日本人の生活リズムが「(拍頭に重きを置く)4拍子」であり、4つ打ちビートと馴染みの深いリズムだからである。

 俳句や短歌の七五調は4拍子が基盤となっており、盆踊りも4拍子である。クラシック音楽界においては、日本人は4拍子が体に染み付いているため、3拍子の曲(ワルツ等)が苦手だというのが定説だ。さらに英語のリズムが3拍子なのに対して、日本語は4拍子であることも要因の一つと言える。

 

  • 「日本のバンド文化」

 クラブやDJ文化が定着している海外では、現在EDM(Electronic Dance Music)が流行している。一方日本では「バンド」という演奏形態が浸透しており、ダンスミュージックを好むバンドが4つ打ちビートを楽曲に用いたことが起因となり、現在の「踊れる4つ打ちロック」に発達した。

 

 ここまで4つ打ち音楽が日本で人気を得たのも、海外とは違った日本文化に影響を受けた独自の形で発展してきたからだ。